
2025年8月27日(水)、28日(木)の2日間にわたり、東京国際フォーラムで開催された「AI博覧会 Summer 2025」。
過去最大規模となる100社以上が出展し、来場者数はなんと10,000人超! 会場は終日、多くの人でにぎわっていました。
大盛況に終わった背景には「AI導入の必要性」に迫られている企業の現状があったようです。多くの企業が直面する人手不足や生産性向上の課題に対し、AIが現実的な解決策として注目されていることを肌身で感じるひとときとなりました。
この記事では、イベント当日の様子のほか、この博覧会から見えてきたAIの最新トレンドと、企業のAI導入が何をもたらすのかをレポートします。
現場の切実なニーズを反映した出展ブースと来場者の熱気
会場を歩いていてまず印象的だったのは、来場者の年齢層の広さです。特に年配のビジネスパーソンの姿が目立ち、出展者との名刺交換やサービス概要を聞き入る様子が随所で見られました。これは、現場でのAI導入を急ぐ企業が、具体的なソリューションを求めて来場していることの表れでしょう。
出展ブースも、大企業向けのスケールメリットを訴求する大規模なものから、中小企業でも導入しやすい特定の業務に特化したソリューションまで多岐にわたるラインアップ。中でも、AI-OCRや議事録作成、カスタマーサポートの自動化といった具体的な業務効率化を目的としたAIツールが特に多くの来場者を集めていました。
満席の講演に見るAI導入への高い関心
展示エリアの活気もさることながら、講演会場の人気ぶりはさらに圧倒的でした。どのセッションもほぼ満席。これは、多くの企業がAIの導入を単なる「トレンド」ではなく、「事業成長のための戦略」として捉え、具体的な知識や成功事例を求めていることの証でしょう。
特に注目を集めていたのは以下の2つのテーマ。
① 生成AIによる生産性向上と新たな価値創出
文章生成から画像、動画制作まで、生成AIの進化は目覚ましいものがあります。講演では、マーケティングコンテンツの自動生成や、デザインプロセスの効率化など、具体的なビジネスシーンでの活用事例が紹介されました。これにより、限られたリソースでより多くのクリエイティブを生み出し、競争力を高める方法を模索する企業が多いことがうかがえました。
② 産業特化型AIによる課題解決
製造業の品質管理、医療現場での画像診断、金融分野での不正検知など、特定の産業に特化したAIソリューションに関する講演も盛況でした。これらの講演は、長年業界が抱えてきた課題をAIがどのように解決し、新たな事業機会を創出するのかを具体的に示している事例だったように思います。自社の課題と照らし合わせながら熱心にメモを取る参加者の姿も多かったです。
AI導入の成功の鍵は「使いこなす意識」
今回のAI博覧会で多くの専門家が口を揃えておっしゃっていたのは、「AIは単なるツールであり、それを使いこなす人間の存在が不可欠である」という点です。AIは業務の自動化や効率化を実現しますが、最終的な意思決定や顧客との信頼関係構築といった「人間にしかできない重要なこと」はまだまだたくさんあります。
ここで、AI導入について触れてみたいと思います。
AIの導入を成功させるためには以下の3つの視点が重要とのことでした。
① スモールスタートでの検証
最初から大規模なシステムを導入するのではなく、特定の部署や業務に絞ってAIを導入し、その効果を検証する「スモールスタート」。AI導入では特にこの方法が推奨されていました。スモールスタートでリスクを抑えながらAIの効果を実感し、全社的な導入へと繋げることができる、ということです。
② AIリテラシーの向上
ビジネスパーソンに限ったことではありませんが、AIを使いこなすための知識やスキルを身につけリテラシーを上げることは、AIを扱う上で不可欠です。社内での勉強会や研修を通じてAIへの理解を深め、全社でAIを「自分たちのもの」として捉える意識を醸成することが求められます。
③ 目的の明確化
「AI導入」そのものが目的になってしまわないよう、AIによって何を解決したいのか、どのような成果を得たいのか、目的を明確にすることも重要です。この目的意識がなければ導入したAIが形骸化するリスクが高まります。
AIと人間の「役割」を改めて考える
「AI博覧会 Summer 2025」は、ビジネスシーンでAIとどのように付き合っていくべきかを改めて考えさせられる場でした。単なる「便利」「時短」「効率化」といったメリットだけでなく、AIが事業成長、ひいてはビジネスや企業の存続に不可欠なツール、そして戦略になりつつあることを痛感しています。
AIは、私たちを煩雑な作業から解放し、より付加価値の高い業務に集中することを可能にしてくれます。結果、企業は生産性を飛躍的に向上させ、新たな市場での競争力を高めることができるようになるでしょう。
そして、AIがもたらす変化はビジネスの領域にとどまりません。AIが私たちの仕事や生活に深く浸透するにつれ、私たちは「人間とAIの役割」「人間にしかできないことは何か?」というより根源的な問いに向き合わされることになります。感情、共感力…現時点ではAIにはない、人間ならではの強みです。
AIは、私たちの仕事を奪うのではなく、私たちを煩雑な作業から解放し、よりクリエイティブで、人と人とのつながりを生み出す活動に時間を費やすことを可能にします。AIを「パートナー」として、私たちの能力を拡張し、新しい価値を創造すること。
AIの活用は、企業の成長に不可欠な戦略であると同時に、私たち一人ひとりが、より人間らしく、よりクリエイティブに生きるための第一歩とも言えるのではないでしょうか。
日々飛躍的に進化するAI。来年の開催も今から楽しみです。
【イベント概要】
イベント名: AI博覧会 Summer 2025
開催期間: 2025年8月27日(水)〜 28日(木)
開催場所: 東京国際フォーラム
主催: 一般社団法人 日本AI推進機構
後援: 経済産業省、デジタル庁
協賛: 株式会社セールスフォース・ジャパン、さくらインターネット株式会社、株式会社ベルテクス・パートナーズ、株式会社サテライトオフィスなど多数(順不同、文中にて敬称略)
出展者数: 100社以上
来場者数: 10,000人超
公式サイト: https://ai-expo2025.jp